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【マーケティング】買わせる技術とDXを巡る攻防(応用編)

【マーケティング】 買わせる技術と 広告会社の未来 (応用編) キャリア
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新人
新人

以前企画書の書き方について教えて頂きましたので、続きをお願いします。

ひよ先輩
ひよ先輩

わかりました。少し偏った意見も含まれますので、本稿については著者の個人的な見解であり、特定の個人や団体を批判したいものではないことを予めご承知おき下さい。

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買わせるテクニック

アメリカのジャーナリストであったヴァンス・パッカードが著書「浪費をつくり出す人々(The Waste Makers)」にて消費行動について以下の7つ戦略を批判的に述べていました。

  • もっと買わせる戦略
  • 捨てさせる戦略
  • 計画的廃物化の戦略
  • 混乱をつくり出す戦略
  • 月賦販売による戦略
  • 快楽主義を植え付ける戦略
  • 人口増加を利用する戦略

現代のサブスクなどにも通じるものがありますが、著者は広告主による個人情報の利用についても批判的な立場を取っており、広告の歴史の中でも重要な人物の一人でもあります。本書は1960年出版でその10年後本書を参考にして以下電通戦略十訓といわれるものが生まれたと言われています(鬼十則ではありません)。

  • もっと使わせろ
  • 捨てさせろ
  • 無駄使いさせろ
  • 季節を忘れさせろ
  • 贈り物をさせろ
  • 組み合わせで買わせろ
  • きっかけを投じろ
  • 流行遅れにさせろ
  • 気安く買わせろ
  • 混乱をつくり出せ

サスティナブルとは真逆な意見にも見えますが、ここから創意工夫でマーケットを作っていく時代で、現代だと以下のような行動経済学を応用した「買わせるテクニック」がはびこっています。

  • プロスペクト理論…損失回避性をついた手法
  • 一貫性の原理
  • 返報性の原理
  • 現状維持バイアス
  • 選択的意思決定
  • 権威への服従原理
  • 希少性の法則
  • アンカリング効果…最初に与えられた数字を基準に考える
  • ゴルディロックス効果…松竹梅で竹を狙う
  • メラビアンの法則…別名「7(言語):38(聴覚):55(視覚)の法則」
  • ピークエンドの法則…人は経験を最も感情が動いた時と最後で判定する
  • 利用可能性…確率や頻度を考える時、直近の例や過去の顕著な事例から評価する
  • ディスポジション効果…プライドを守ろうとしたり、後悔を避けるように行動する
  • 心理的リアクタンス…行動の自由を奪われた(そう)と感じた時、回復するように行動する
  • フレーミング効果…例:「生存率95%」と「死亡率5%」で意思決定が変わる
  • ウィンザー効果…第三者から間接的に言われたほうが信頼性が増す
  • ツァイガルニック効果…終わったものより中断や挫折した事柄のほうが覚えている
  • テンション・リダクション効果…購入の緊張後、注意力が散漫になる
  • バーナム効果…誰にでも該当するような曖昧な記述を自分に当てはまると思ってしまう
  • バンドワゴン効果…並ぶところに更に並ぶ
  • ザイオンス(単純接触)効果…短期間で繰り返し接すると好意度や印象が高まるという効果

著者はクレカキャッシング付キャッシュカードやモバイルゲームなど、同じところを連打し続けるとキャッシングや課金することになるUIにも名を付けたいくらいテレビ通販ほど派手ではないですが、巧妙に設計して買わせる技術が開発されています。

CPA、ROASの呪縛

広告会社や企業の宣伝担当になると真っ先に覚えるのが、impression、click、conversion、acquisitionの組み合わせのCTRやCPA、それにcostと売上を加えたROAS、利益換算した投資効率のROIら辺の用語になります。このCPAをいかに少なくそして獲得ユーザー数とそのLTV(顧客生涯価値)を最大化できるかということに苦闘するあまり、次第に縮小均衡し、やがて(コンテンツやダイナミックプライシング含む)多変量テスト、新媒体、オウンドメディア、フリークエンシーの最適化、アトリビューション分析での予算配分をし、さらにROIの最適化を追求することになっていきます。

広告効果がわかる時代になってしまったことで、広告らしいものがより嫌がられ、有名YouTuberのちょっとした見切れた商品が爆売れしたり(古風には「プロダクトプレイスメント」)、逆に仕入れや放送網を抑え(日本のように型番を変えたりせず)価格が市場よりも本当に安いライブコマース(すべてが広告コンテンツなのがリクルートモデルですが、この場合は商品在庫を抱えるモデル)が注目されています。

広告費掛かっているから高い?

ネットワークビジネスの勧誘でよく「化粧品がなぜ高いかわかりますか?」「価格の50%が広告宣伝費なのです」「対して我々は口コミ~」という決まり文句があったり、企業のIRで「広告宣伝費削減により営業利益が改善し~」などと言われますが、広告費があることで売上予測に応じて原材料コスト圧縮、製造ラインを維持、顧客維持できるので、広告費が商品の値段を上げているというのは一つのバイアスにすぎません。それでも広告に依存しすぎるビジネスはもろくなりやすいのは確かなのですが、最適化ではなく削減によって利益改善と言い切ってしまうのも近視眼的な発言といえます。

機械学習で見えた結果

前回ペルソナについて触れましたが、実装フェーズに入るとまったく違うニーズを満たすことになることはよくあります。都度ターゲットを変えていく必要が出てくるのですが、運用の中でAIまでもいかない機械学習でテストした結果に対して、人間の理解が追い付かないもしくは腑に落ちない結果となることも理解する必要があります。例えば「愛知県の自転車好き44歳男性はピンクのブラジャーを毎月複数買うのに対して、同じカテゴリの45歳男性は黒のブラジャーを春だけ1度買う」この色と頻度の説明は年齢だけでは説明できず、別の背景があるかもしれないし、そもそも多変量テストを繰り返しているうちは理解する必要すらないのです。

レオ・バーネット社のエイトボール

世界3位のピュブリシス・グループ傘下でアメリカの広告会社であるレオ・バーネット・ワールドワイド社は世界中のネットワーク各社が制作したプロダクトを「The HumanKind™Scale」と呼ばれる基準に従って、各社のクリエイティブ責任者委員会「グローバル・プロダクト・コミッティ(GCP)」が審査するという行事をしています。その基準の最高位が10なのですが、7(セブンプラスと呼ぶ)が世界に通用するクリエイティブとされ、8(エイトボール)を獲るのが栄誉とされ、6以下はまったく評価されないものとされています。以下はその基準をDeepL翻訳したものになり、以下URLにてプロダクトを見ることができ、広告会社とブランドのあり方について考えさせられるものがあります。広告賞といえばカンヌなのですが、基準をよく知らないのと、下記は言語化されていて、微妙に文言がアップデートされているので、取り上げた次第です。

10:レジェンダリー
世界の考え方や行動を変えることで、新しい基準を打ち立てるようなアイデア。

9:トランスフォーメーショナル
大衆文化の一部となることによって、人々の生活を変えるようなアイデア。

8(エイトボール):Contagious(伝染性)
エンターテインメント性、参加性、粘着性があり、人々がそのブランドをグローバルに共有するようなアイデア。

7(セブンプラス):Inspiring
美しく、ひらめきがあり、人を魅了する、人間中心のアイデアで、人々にとって重要なもの。

6:インテリジェント
人々の時間と注意を引きつける、魅力的で思慮深いアイデア。

5:Ownable(所有できる
そのブランドのユニークな目的、つまり自分の人生における存在理由を理解している。

4:予測可能
そのブランドが何を象徴しているのか分からない。一般的な、あるいは陳腐なアイデアと実行。

3:平凡
人間的な興味や感情的なつながりを生み出さないアイデア。カテゴリー参加者。

2:不可視
アイデアがない。人々の時間や注意に対して何の報酬もなく、全く気付かれない。

1:破壊的
ブランドにとっても代理店にとっても、世間とあまりにかけ離れているため、損害を与える。

https://leoburnett.com/agency

参考:

Global Creative Leads Gather in London for Leo Britannia, Unveil the Agency’s Top-Rated Work

Take a seat at Leo’s Table: we’re serving up top-rated work

ZMOT、低欲望化、デジタル領域の新規参入

Googleが2011年に提唱したZMOT(Zero Moment of Truth)という消費者行動理論があり「消費者は棚を見る前から買うものをネットで決めており、体験を通じてさらにネットで購入意志を決定している」というもので、2004年P&G社が棚から選ばれるためのTVCMから店舗内販促、パッケージ、PRを見直したFMOT理論に対比するものになります。そのZMOT(Zero Moment of Truth)によって消費者のベネフィットを「あたかもユーザーが言っているかのように」宣伝してしまう広告が流行ってしまうことになります。

〇〇を買わない世代、シェアリングエコノミー、リユースによってさらに低欲望社会が生まれることになり、先の電通戦略十訓とは反対の方法に向かう成熟社会になってきています(放っておくとそうなるので訓戒があるというのは当然なのですが)。

Amazonのレコメンドや配送システムによって、欲しいと思うようなものはすでに家庭に納品されるような状況や自分の興味がレコメンドによってクラスター化される〇〇界隈の現象がおき、計画されたセレンディピティが起こされるような世界に向かっています。

広告会社はそのような中、戦略系や会計系コンサルティング会社や商社との競争を強いられている状況で、伊藤忠商事はWPPグループのAKQAと新会社を設立したり、アクセンチュアが変革コンサルティングと顧客体験を掛け合わせて日本でも積極攻勢を仕掛けています(もちろんデロイト、PwC、マッキンゼー、BCGもデジタル領域を強化していまし、すでに大手になっているところもあります)。

参考:

伊藤忠がアクセンチュアに「異業種戦」を挑む理由-広告世界最大手と合弁コンサル会社を設立へ

New Future | 日経ビジネス電子版 Special

共創、グローバル化、ファブレス化で見えなくなるもの

トフラーが「第三の波」で著した「プロシューマー(生産する消費者の造語)」や岡田斗司夫さんが述べる「評価経済社会」によって、無償やお金を払ってでも企業やプロジェクトに参加して生産したいという消費者がいて、企業が主体だと「共創」と呼ばれたりします。

一方グローバル資本主義経済は「世界中の安い労働力で作り、世界中に高く売る」試みであり、計画的搾取非人道的部分を見えないところに追いやる仕組みだったのですが、政治的均衡が崩れることによって、民主主義と社会主義での分断の中、欧州的枠組みであるSDGsを持ち出すまでもなく、ロックダウンによるサプライチェーンや物流の混乱によって供給不足に加えて原油上昇によるインフレが、利上げ/利下げ合戦を起こしている状況となり、更に見えなくなってしまっているように感じます。

本物のFA(ファクトリーオートメーション)の場合もありますが、ファブレス化によって「作る」ものが見えなくなり、責任の所在すらわからないというのがモダン・タイムズとは違った皮肉なのかもしれません。

参考:僕がアクセンチュアを辞めた理由

SDGs、ESG、生物多様性

SDGs(Sustainable Development Goals)、ESG(Environment、Social、Governance)、生物多様性を意識して守り行動しように異を唱える人はいないと思いますが、実際の現場で利益団体があったり、標榜しているところを見ると訝しげに思ってしまうのが、自分の性格の悪いところです。日本は乗らざるをえない立場なので、マーケティング的にはのっかるのが正解です。

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以上、参考になれば幸いです。